2011年9月13日火曜日

オレの方向かせろ!

 前後するが、社員教育の話。
 企業の社員教育には定番はない。
知識・技術教育は必要だがそれよりも大事なのはロイヤリティー、今では死語化しつつあるが、所属する企業への帰属意識が重要視されていた。特にダイエーでは先年の労働争議以降、喫緊の課題だった。

新入社員時代から帰属意識、もっと砕いて言えば会社の方を向いているか?が要求された。社長曰くは「オレの方向かせろ」だ。
 それも時間がない。毎年4月には何百人もの新入社員が入社してくる。
色々専門書も読んだし各企業の事例も研究した。でもダイエーのような企業は日本には存在しなかった。つまりは大規模なチェーン経営、しかもサービス業、そして創業間もない企業。社員数15000人、組織も軟弱。営業所が多い(当時店舗数150店)一人社長だけがカリスマ性で会社を引っ張っている超急成長な企業。


しかもお客様の要求もだんだん高くなってくるのに知識・技能がそれに追いついていない。せめて将来を担う新人だけでもキチンと教育しなければ。
そこで傾斜的な手法に走った。つまりは技術・知識教育は放棄。情意(=やる気)にポイントを置いた。社長指示である「オレの方・・・」教育だ。
よくよく考えると、200人の新入社員は150店舗に配属されるが、彼らにとって新入社員はボク一人の状態、1店あたり1人しか配属されないからだ。同期といったヨコのつながりが全くない。

 これでは帰属云々以前の話。そこで企画したのがどこかのメーカーが採用していた「グループ制教育」。
先輩のソコソコ優秀な社員をリーダーにして近隣数店舗をグループ化、数名の新人を先輩が管理するやり方だ。先輩社員への意識つけも重要、事前にリーダー教育も実施した。人事部とリーダー選びから始めた。2年先輩のリーダー20名位を選出、合宿でリーダー教育から始めた。最初は各店からクレームが来た。教育期間中人手をとられるからだ。しかしその後リーダーに選ばれることが昇進への近道と噂されるくらいになり、教育への味方が変わってきた。
 新人は就業後や定休日にリーダーの元に集まり悩みを相談、情報交換する。
その時の費用くらい出してやりたかったが敢えて経費はゼロ。それでも彼らには感謝されたし、社内の新しいインフォーマル組織が出来上がった。自分自身でグループの研究テーマを決めて合宿研修時に発表することのみが制約条件、事務局としては特にすることがない。社員→新入社員→リーダー→人事と言う情報ルートも自然と出来あがった。社内的には「これで教育?」「教育部は何してる?」と批判も出たが、無視した。いまに解るよ。
 そして年2回、全新入社員を集めた合宿を富士山のふもと御殿場の「国立青年の家」で実施、研究テーマの発表会だ。勿論、社長も参加。「これでオレの方・・・」の実践だ。新入社員にとって社長は雲の上の人、合宿で24時間共同生活をすることで当時既に神格化されていた社長の実像に触れることが出来た。中内さんも普通のオッサンや!大成功の企画だった。
 
 何回目かの御殿場での研修時、西日本は大豪雨に見舞われ交通は至る所で遮断。研修の中止も考えたが、そのまま実施、酒井部長の「こんな時、どうするかリーダーの判断のテストや?」と言う考えで。
結果、送れて来たグループはあったが、全員集合。鹿児島から飛行機で来たグループや在来線を乗り継いで来たグループ、色々あったが、良い研修になった。

 因みに事務局の私は愛車に道具類を満載して豪雨の中、高速を急いだが大垣で名神が冠水通行止め、一般国道をひた走り何とか御殿場着、次の日には澄まして新入社員を向かえたものだ。

 数年後、西宮店次長時代に案内が来た。
リーダーの同窓会をするので参加して欲しいとのこと。全員で懐かしい御殿場の国立青年の家に集まり、富士登山をしようと言うのだ。嬉しかった。 
社長にも招待状を送ったら参加すると言う。社長も嬉しかったのだろう。 
 残念なのはこの企画をケンケンガクガク練った酒井さんが亡くなっていることだった。 酒井さん「社長の方向かせた」結果ですよ。



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