2011年12月18日日曜日

日米通商交渉

神戸日米協会の事務局長としてアメリカ総領事館との付き合いがあった。お互い上手く利用しあっていた感じだ。
総領事宅に招かれたり、総領事家族とホークス戦を見に行ったりもした。

因みに総領事自身は日本語ペラペラ、日本の風習にも熟知されている。アメリカの駐日外交官は着任1年前に日本に来て横浜の研修所でみっちり日本&日本語について勉強させられ、また総領事に日本をアドバイスする日本人スタッフも常に行動を共にしている。日本人以上に日本の歴史や風習を知っている。

ある時の米総領事の挨拶で面白いことを言われた。
「先ほど『お忙しいところお越し頂きまして・・・』と言われましたが、日本には『貧乏暇なし』という諺があります。私は常に忙しくしてヒマはありませんので『貧乏』なんですね」と。
ある時、総領事館から電話が神戸にあった。
内容は「中内社長の来月アメリカ訪問時に米通商代表がランチを共にしたいと言っている」ついてはスケジュールの調整をしてくれないか?とのこと。
通商代表は日本でいえば通産大臣、単なる昼メシのお誘いではないだろう。
このことは内容的には東京の秘書の仕事「東京へ連絡してくれ」と言うと、東京は東京で大使館が秘書に連絡を取っている、神戸からもプッシュしてほしいとのこと。
念の入ったことで、あらゆるチャネルを活用して動くのがアメリカ政府流らしい。当時、外交問題化していた「米産牛肉の輸入」について、日本の流通業のトップとしての意見を聞きたいのだろう。つまりは当社とアメリカ双方の利害は一致しているからタッグを組もうと言う趣旨。「昼メシでも・・・」と言うのが面白い。

同じようなことが続いてあった。
これも日米の通商問題、「流通業の自由化、大店法の撤廃」について又、日本の流通のトップ企業としての意見を聞きたいとのこと。
これも手が込んでいて、職務のレベル毎に面談をしたいらしい。東京では社長は勿論、開発担当役員・部長クラス、関西では地域の開発責任者といった各レベルでのヒアリングをするという。

関西の開発担当と総領事館へ行き担当領事と面談。
外交のややこしいのは普段は日本語で話す領事が公式な話なので母国語の英語で話す、途中から話に時間がかかるのでこちらの発言(日本語)は領事は理解できるので通訳を飛ばし、彼の発言(英語)のみ日本語に通訳。
領事が確認したかったのは大店法についての考え方、ダイエーとしては大店法撤廃に賛成なのか?ということ。
しかし実は大店法は両刃の刃、当社が出店を規制されるように他社の出店も規制することが出来る。だから、即廃止・自由化されても実際は困るというのが本音。 領事が驚いたのはダイエーは上から下まで統一されたことを言うということ。 当社ほど上意下達の徹底した企業はないのだ。

その後、アメリカの圧力もあって大店法は廃止されたが、アメリカ系のスーパーの出店はない。 あれはナニやったんや!
神戸日米協会という何のメリットもない仲良しクラブが役に立つこともあるもんだ。渉外の仕事というのはこんなものなのだ。









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