2011年11月9日水曜日

留学生の受入れ   




 社長が政府の臨時教育審議会のメンバーになっていた。中曽根内閣の時代だ。
 政府の各種委員の人選はどうやら多額納税者(社)から選んでいるようだ、つまりは沢山税金を納めている人(会社)への配慮みたいなもの。
 臨教審の中身はよくは知らないが、そこで我が国の受入れている留学生が先進諸国に比べて少なく、今後は留学生を多数受入れるべきとの方針が決まった。そこで委員の一人であった社長は自身が実践しようと当時設立まじかであった流通科学大学と中内育英会に「中国人留学生を受入れる」よう指示があった。
いつもそうであるように指示は至極簡単なもので具体化は我々事務方がしないといけない。具体的には中国人・流通科学大学しか決まっていない。何人か? 費用は? 方法は? 全て決めなければならない。
 大学に留学生枠を設けるだけなら簡単だが、どうやら費用を全額負担する腹のようで、採用人数と費用とのバランスがポイント、費用は育英会からだすことになりそうで、といっても育英会も潤沢に資金があるわけでもなく、またしてもエライコッチャ!
 入学までは大学が費用面では育英会がもつことで、まずは費用を試算、学費は大学側が負担、その他の就学費用と生活費(住居・食事・その他)を育英会が負担するとして試算、概算で1人につき毎年200万円もいる。学部入学として2年間で1400万円と試算しところへ中国での選考は都市別に振られ計6名と決められた。つまりは年間2400万円
 要は当社と密接な関係のある都市の幹部にそれだけの権益を与えたことになる。結果的に選ばれた留学生は必ずしも成績優秀者ではなくその地方の有力者のお声かかりの人の色合いが強く、主旨と現実のギャップは大きなものがあった。
 育英会事務局としては資金手配をしなけれなならない。
半永久的に続く事業としてこれは増資をして(財団なので基本財産の増加)その利益(株の配当)で賄わなければならない。増資といっても元々社長が個人的に全額出して作った財団法人、いまさら他人さまに声はかけられないし、だれもこんな話にのってはこないだろう。社長に追加の出資をお願いするしかない。
 金額を株式に逆算(配当は1株15円だった)するとなんと300万株以上になる。当時、株価は2000円位していたので総額は60億円!
 問題は誰が社長に説明してその株式をもらってくるか? 事務方としては常務理事にお願いするしかない。誰も気の進まない仕事だが、無理やり常務理事に行ってもらった。「君は社長のポケットに手を突っ込めというのか!」と常務には嫌味をいわれたが、イヤならオレが行くといったハラはくくっていた。
 すごい話だが、社長は二つ返事でOK。当時の中内社長にとって60億円は庶民の6万円位の感覚か?
 ただし、税金がかからないようにとの指示、我が国では寄付をしても下手をすると課税されかねないのだ。
 方向性は出たので事業としてはGoしたが、あとに残された問題はこの税金問題。 
税務なんて全く知らないし、公益法人のことも日常業務以外は全くの素人に近い。
ラッキーだったのは社長顧問に以前某立大学の専務理事をされ、公益法人には非常に詳しい方がいてその方の指導を受けることが出来たことだ。毎度のことだが何か問題が起こるとどこからか救世主が現れて助けてくれる。ラッキーそのものだ。

 また、社長の個人資産管理会社も全面的に協力してくれた。
しかし、作業は事務長たる私ひとり。シンドイことに変わりはなかった。
 監督官庁たる兵庫県教育委員会や大阪国税局との調整が主な仕事、最終的には「試験研究法人の基本財産増額」は無税扱いになるのでその手続きを実行した。今までの事業内容に始まり、今の事業、今後しようといる事業それぞれの内容を明記、中には関係者の署名・捺印がいるものもあり、非常に作業は煩雑ではあった。
しかもその申請書たるや同じものを手書きで3部提出しなければならない。申請書は厚さ2cmもあるしろもので3部作成はきつかった。勿論、年度内申請の期限もある。やっと何とか作成し提出。
ホットしていたら東京の国税庁から電話があり話を聞きたいという。このときのことは今でも覚えている。担当官いわく「今度、何かの用事で東京へ来られる機会がありましたら、国税庁へお立ち寄り願えませんか」と至極丁寧な言い回し、この電話で「では次の機会に・・」という訳にはいかない、「早速伺います」いうことで、翌日朝一番に上京、国税庁へ。 
 エリート中のエリート官庁、大蔵省の一部だから石造りの古いビル、エレベータの床がすり減っている。廊下は薄暗い。驚いたのはエアコンがない、夏の暑い日なのに扇風機しかない。税金を集める方だから無駄には使わないという姿勢のようだ。
 担当官と面談したが、内容的には書類の確認程度、つまりは書いた事務方の人間を確認したかっただけの模様。しかし、これで何か問題があればいつでも国税に連絡するルートも出来た。先方もそれが狙いのようだった。
 色々あったが、何とか基本財産増額問題は完了した。
お世話になった方々に感謝! 感謝!












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