2011年11月10日木曜日

レジャーワールド構想   


 神戸にレジャー施設を作ろうという企画が1985年頃に持ち上がった。

 重厚長大と言われた工業中心の時代が終わり、これからは軽薄短小の時代、ソフトの時代と言われかけた頃、神戸の基幹産業であった製鉄業が終焉を迎えようとしていた。川崎製鉄の工場閉鎖、神戸製鋼所の高炉縮小があり、具体的には海岸の工業地帯がポッカリと空いてしまうことになった。神戸市として基幹産業の縮小は人口の縮小に繋がり、ひいては街の衰退に繋がる大問題だ。

 そこで提案されたのが新しい産業としての「レジャーワールド構想」、東京ディズニーランドの成功により全国各地にいわゆるテーマパークが多数建設されかけていたので神戸でも集客施設として作ろうという気運が盛り上りかけていた。

 最初は神戸商工会議所が中心となって研究会ができ、関係各社の共同出資で企画開発会社に移行して研究企画が進んでいた。
神戸レジャーワールド開発㈱(略:KLW)がそれだ。 神戸の主要企業が出資し社員も出したが、どこもメインのスポンサーになろうとはしない。事業への不安と未経験が先に立ち、最終的には1000億単位の膨大な投資がネックになった。TDLの場合、広大な敷地がありTDL周辺土地を売却することで開発費がねん出できた経緯があるが、こちらはゼロからの出発、何千億という投資をする企業はなかった。

 紆余曲折があり神戸市が開発したポートアイランド二期工事の用地に建設するという事業計画案も完成、模型まで作られていたのに頓挫した。(このあたりの経緯の記憶がアイマイになっているが)
結論から言うと当社の対応が事実上この計画を頓挫させたのは事実。商工会議所の次期会頭問題との絡みで、KLW企画会社に参加していたが出資は残したものの同社役員は退任、社員も引き上げた。

 当時のKLW最大の問題は神戸市が用地提供をスンナリOKしないこと、勿論埋立地の用途変更申請が必要で国との厄介な問題はあったが、主たる問題は事業の成功性、だれもが未経験ゾーン、そんな中一番理解があるとされていた当社が事実上の撤退したのだからお先真っ暗になった。KLWの会社は休眠状態になり一時レジャーワールド構想は完全に頓挫した。財界・神戸市の関係もギクシャクしかけた。

 KLWの会社が頓挫して直ぐに今度は神戸市が中心となって計画を進めるという。その為の協議会を作るので入って欲しいとの依頼があった。しかも型としては非公開、市が主導権をとるが民間の協議会に行政も参加する型をとる。従って、経費も会員企業の均等負担、協議会の会費という型で集めて全ての運営費にあてる。だから会費というには余りにも高すぎる会費。コンサル会社のコンサル料も入っているらしく、何か神戸市にハメラレタ感じ。どうして市がやる気になったのかも不明。参加企業はKLW会社の中心メンバーにイコールで、これもおかしな話、正規会員は各社のNo2(企業として決断出来る人)ということになり、実務はワーキンググループ(WG)を作り、各企業からの参加、市職員、コンサル会社で進めるということになった。WGには私が入った、WGは隔週に開催されたので割と忙しい作業ではあった。KLWの作った企画を尊重というかそれしかないのでそれをベースに主には事業計画の収支試算の検討から入った。要は事業を進めていくについての損益・継続性がポイントだった。TDLと異なるのは関東と関西のマーケットの差、ディズニーという世界ブランドとノーブランド、資金の無さ等々、問題点を挙げると成功は覚束ない。
 ただ、ポーアイにテーマパークを作るという結論は決まっていたようにも思う。行政として神戸市が入りやすくする為のストーリー作りであり、国との調整(埋立地の用途変更)へのバックアップのようなものにも思えた。企画がまとまりプロジェクトは最終段階に、要は実行レベルでの参加、出資と債務保証、最後の踏み絵みたいなものだ。ここは神戸市の根回しは巧妙で不参加のメンバーはなかった。ただ、出資、債務保証で渋る企業が多かった。金額が大きすぎる。1社当たり計250億円、参加8社で2000億円、今までにない金額だ。 
 どこかが先頭を切れば話は早い、そんな意思はなかったのだが、当社の決済の速さで社長のOKを即とって市の事務局へ参加する旨報告、これがひき水となり全社参加へ。

 
 この間の動きで当社に対するシンパシーがハッキリした。
各社にインフォーマルに調整していくと・・・。某製鉄会社や重工業会社、総合商社の当社寄りはそのように明言する会社があるほど明確になった。元々当社サイドにあった食品会社を入れると過半数の企業が当社シンパとなった。「ダイエーさんの後をついて行くのが当社の方針です」と言い切る企業まで現れた。
 個人的なことを言えば、これで確実な出向先が確保されたようなもの、定年してからKLWの部長くらいにはなれるかも? 何か官僚が天下り先の財団を作ったような感じがしないでもない。

 最終的には次回(これがあの平成7117日)の協議会で全メンバーが集まり、正式決定ということでスケジュールが決まった。
そして、運命の117日を迎える。あの阪神淡路大震災のあった日だ。
 震災で神戸市は非常事態。
レジャーワールドどころではない。取りあえず当日の協議会は無期延期、無期延期ということは計画自体も無期延期、無期延期は中止に近い。半年後、正式に中止が決まり当然のことだったがこれで皆が助かった。
 神戸市も各参加企業も成功が疑問視される事業、しかも250億もの出資が助かった。





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